前回は、スイング始動時の手の動き(テークバック)について説明しました。今度は足(ステップ)を中心に見ていきます。再確認していただきたいのは、テークバックとステップは同時進行だということです。第5回の野球教室と併せてお読み下さい。
構え → ステップ → スイング → インパクト → フォロー
以上の5動作に分けられます。
それぞれの動作には、確実にボールをとらえるための重要な要点がかくされています。
この連続写真は、各動作ごとの要点を正確に行える中日ドラゴンズOBの川又さんの水平打法(レベルスイング)です。この野球教室では、この水平打法を基本において動作を解剖し、各動作の要点を解説しましょう!
※水平打法=球道に対して水平にバットを振ります。決して、地面に対し水平に振る打法ではありません。
投手のモーションを見ながらタイミングを見計らってステップを開始します。きっかけは、前足(投手側の足)を上げることですが、この前足の上げ方も重要です。
解説:すべての物体には重心というものがあり、それは重さがどのような位置にあるかによって変わり ます。人の体では手足の位置や体の曲がり具合で重心位置が変わることになります。足を上げると足自体の重さが高い位置にくるため、重心も高くなります。重 心の高い物体は不安定で、前足を高く上げるほど不安定さが強まり、バランス維持が難しくなります。
体の後方からのチェックも有効!
(写真(3))
頭で分かっていても体で表現できないのは、自分自身のやっている姿が自分で観察できないからです。しかもテークバックは、投手方向に顔を向けている打者にとっては、見えない場所で行われている作業です。
構えているときは適正な位置にあっても途中でずれたり、いざスイング開始というときに下がったりという選手が多く見られます。
ステップ開始と同時に、第5回で説明したテークバックでグリップはトップの位置にきているはずです。ステップ後半では、今度はグリップが体の前進と一体になって前方へ進み始めます。バットは乗り物に乗っている状態で、まだ腕のスイングは始まっていません。ここでも後ろ足の内もも(内転筋群)の緊張が維持され、壁はまだしっかりと残しています。
アドバイス1: 前足のひざが開かない(前足のひざの正面がピッチャーに向かない)ように、ひざを締めてステップしていきます。
アドバイス2: ひざが開くと腰がいっしょに前を向いてしまいます。
アドバイス3: トップの位置もその影響を受けてずれます。また、その後のスイングで重要な腰のひねりから生まれる爆発的な回転力が半減してしまいます。
写真のような理想的な姿には、バットを振るための加速距離を充分残している、いわゆる「ため」の状態があります。この「ため」が次の爆発的なスイングを引き出します。
ステップの幅は広ければいいというわけではありません。当然、大きくステップすると体に勢いがつきますが、それが必ずしもスイングにいい影響を及ぼすとは限りません。ステップが終わる頃、本格的にバットスイングが始まるわけですから、ステップ後の態勢(たいせい)がバットを振りやすくなっているほうが重要です。
正しい目線:(写真(3))
・川又氏の場合、バットを振りやすいステップ幅はほぼバット1本分になっています。これは、身長や脚の長さによっても違いますが、その姿勢を見ると脚の中央線が左右両方とも反対側の肩のほうを向いています。
目線が下がりすぎ:(写真(2))
・広すぎると感じるステップ幅にステップすると、脚の中央線は肩からずれています。体全体が沈み込むため、目線も下がりボールを的確にとらえることが難しくなります。
目線が上がりすぎ:(写真(4))
・逆に狭すぎるとスイングで前方に出られないため、のけぞった小さい打ち方になってしまいます。※目線の上下動はできるだけ少ないほうがよく、良いステップ幅は、腰や上半身の「ため」と後ろ脚の余裕を 残せる程度となります。