スイングの序盤では、振り下ろしが行なわれます。トップの位置からバットが始動し、後ろのひじをヘソ方向へ引きつけることによって、グリップもヘソ方向へ引き寄せられ、バット全体が振り下ろされます。=
写真(1)
ただし、この振り下ろしは、ミートポイントのボールの高低に合わせる(レベル調整)ための振り下ろしであって、いわゆる「ダウンスイングで打て」と言われているようなものとは違います。スイングが下向きになっているのでダウンスイングとも言えますが、ここではあえてこの部分をダウンスイングと呼ばずに「振り下ろし」と表現しています。
水平打法
解説:水平打法は、あくまでボールを迎え撃つことを目標にしていますので、トップの高さからミートの高さまでバットを下げなければならないわけです。それもミートポイントの手前で高さを合わせ、バットを押し出しながら並進運動でインパクトを狙います。インパクト後は、フォローからフィニッシュへとバットを回転して行きます。
構え → ステップ → スイング → インパクト → フォロー
以上の5動作に分けられます。
それぞれの動作には、確実にボールをとらえるための重要な要点が隠されています。
この連続写真は、各動作ごとの要点を正確に行える中日ドラゴンズOBの川又さんの水平打法(レベルスイング)です。この野球教室では、この水平打法を基本において動作を解剖し、各動作の要点を解説しましょう!
※水平打法=球道に対して水平にバットを振ります。決して、地面に対し水平に振る打法ではありません
スイングは、並進運動と回転運動の組み合わせで成り立っています。バットの動きは複雑で言葉では言い表しにくいので、写真(2)でイメージを示しました。
並進運動/太い矢印で示した部分が並進運動の要素が強い個所であり、並進運動のどの部分でインパクトを迎えてもボールとバットは、ボールの軌道とほぼ直角に衝突することになります。回転運動だけのスイングでは、ボールを確実にとらえるポイントは一瞬だけですが、並進運動の間ならわずかながら時間に余裕が生まれます。
「後ろのひじをヘソ方向に引き寄せる」
後ろのひじをヘソ方向に引き寄せるというところに、非常に重要なポイントが隠されています。
解説:ピッチャーの投げる球は高め、低め、インコースやアウトコース、さらにカーブ、フォーク、シュートシンカー、パームボールなど実にさまざまな球種に対して、バットの軌道をミートポイントへとレベル調整するために、このひじの使い方が実に重要になっています。
☆振り下ろしは、「後ろのひじをヘソ方向へ引き寄せる」というポイントを忘れずに練習してください。
高校球児が活躍する甲子園野球の放送の中で、ダウンスイングを強調したバッティング指導が紹介されたことがあります。ダウンスイングでは、引力の影響が活用できますので非力な選手でもバットスピードを高めやすいということにおいて、まだ体のできていない選手の場合はメリットもあります。しかし、「ボールを上からたたけ」というような指導に疑問を感じます。このような考えは、バットスイングを終始ダウン方向に振れと言っているような誤解が感じられます。
アドバイス1: ピッチャーの投げた球の軌道に対して、上からたたくとバットとボールの接点は1点に限られてしまいます。
アドバイス2: 構えからミートポイントへ振り下ろしていくとバットがボールの軌道と交差するように通ります。
アドバイス3: ボールにバットを当てるチャンスが、ほんの一瞬だけになってしまい、空振りの確率が非常に高いスイングになります。
アドバイス4: ダウンスイングといっても、水平打法での振り下ろしの部分だけであり、その目的はスイングスピードを高めるだけでなく、レベル調整によって球を迎え撃つためのバット軌道に乗せることにあるはずです。
☆高校球児がバッターボックスに入る前の素振りを見ていると、明らかにダウンスイングを誤解していると思われる選手がかなり見受けられます。ぜひ、この野球教室で紹介している水平打法を理解していただきたいと思います。
(1)胸の前で、肩の高さでバットを持ちます。この時、左右のひじの間隔を肩幅程度にします。
(2)肩の力を抜きます。
(3)押し手のひじを体の外側(キャッチャー側)へ軽く引きます。
(4)押し手の肩口までグリップを移動させます。
※図の上腕線はバットの移動といっしょに平行なまま移動します。
上腕線=右肩から右ひじ、左肩から左ひじまでのそれぞれの線