構え → ステップ → スイング → インパクト → フォロー
以上の5動作に分けられます。
それぞれの動作には、確実にボールをとらえるための重要な要点が隠されています。
この連続写真は、各動作ごとの要点を正確に行える中日ドラゴンズOBの川又さんの水平打法(レベルスイング)です。この野球教室では、この水平打法を基本において動作を解剖し、各動作の要点を解説しましょう!
※水平打法=球道に対して水平にバットを振ります。決して、地面に対し水平に振る打法ではありません
「インパクト時、1トンの力がボールに…」
フォロースイングは、インパクト後とはいえ、打撃成功のために重要な部分です。フォロースイングでどのような意識を持っているかという「フォローイメー ジ」がしっかりしていないと、インパクトの衝撃力によってバットが軌道をそれ、ボールは思う方向へ飛んでくれません。
写真(1)
読売ジャイアンツ 長嶋元監督の場合
○ボールの反対側の黒い部分へ打ち抜くイメージでインパクトからフォロースイングへとつなげていたそうです。押し手のプッシュ力が強まり、フォローが大きくなります。
写真(2)
木俣氏の場合
○黒い部分にバットを強く押し付けるイメージです。
ヘッドが遅れ、インサイドアウトにバットが出ることで手首の返りが遅くなり、強いプッシュが生まれます。
※両者とも単にバットをボールに当てるという意識ではなく、ボールを飛ばす方向へ押し出すと
いう強いフォローイメージを持っています。このようにインパクト後も考えたフォローイメージ
が打球の方向性を安定させます。そのためには押し手の強い押し力が必要です。
解説1: インパクトでどのくらいの力がボールに加わるでしょうか。
(例) ボールの打ち出される速度
ボールのスピード 時速 100km の場合
バットスイングスピード 時速 100km の場合
ボールの芯とバットの芯が同じスピードで衝突した場合、打撃後のバットスピードは減少し時速50kmになったとすれば、ボールは時速150kmで打ち出されます。
※ボールとバットの衝突時は、お互いの速度・力の量・接触時間などにより科学的な計算式によりボールへかかる強さが判明します。細かな計算は省略しますが、上記のスピードでボールとバットが衝突した場合ボールにかかる最大衝突力は、1トンにも達します。
解説2: ボールに加わった大きな力は、バットに対しても同じ大きさの力で逆に押し返してきます。これが、手に伝わる衝撃です。この力に抵抗するために、インパクトに向けて押し手を押し付けていくことが大切になるわけです。押し手の強い押し力は、以前説明した通り並進運動を生み出す鍵(かぎ)でもあり、インパクトを安定させる鍵でもあるわけです。
解説3: その押し手がインパクトを完了するまで強く押し続けていると、自然にフォロースイングでバットがボールの後を追うように前方へ伸びていくはずです。
写真(3)・写真(4)
写真のように、あるところまでいくと手首を返します。その時期はバットがこれ以上前に出ないところまでくると自然に起こるということを第12回に説明しましたが、それにはちょっとしたコツがあります。
解説1: 人の体の仕組みを考えると、ひじから手首までの前腕部(ぜんわんぶ)には、尺骨(しゃっこつ)と橈骨(とうこつ)という2本の骨があります。外からは見えませんが、この2本の骨はひじ関節の手前で車軸関節(しゃじくかんせつ)という特殊(とくしゅ)な関節構造(かんせつこうぞう)を形成しています。他の動物に比べて人の特徴(とくちょう)とも言えるこの構造のおかげで、人の手のひらは簡単に回内(かいない)・回外(かいがい)できるようになっています。
「回内」 ●手のひらを上向きから下向きにする動作
「回外」 ●手のひらを下向きから上向きにする動作
解説2: 写真(5)・(6)・(7)は、前の腕だけでフォロースイングの練習をしているところですが、前の腕が回外していくのがお分かりでしょう。この回外・回内がフォロースイングで手首を返すときの主要な役割を果たしています。バットを握った状態で、前の腕を回外、押し手を回内するとどうでしょう。まさしくフォロースイングでの手首の返しになっているはずです。
「グリップは小指と薬指に力を入れて」
この手首の返しには、バットを後方へ戻す役割があります。ピッチャー方向へ前の腕を伸ばして手のひらを下にした状態では、フォロースイングがストップしてしまいます。
(1)前の腕を回外させて手のひらを上に向けると、バットの進行に沿ってひじが曲げやすい状態になります。
※手首の返しは、前の腕がピッチャー方向へ向く前ごろから始める必要があると考えられます。
(2)手首を上手に返すコツは、インパクト後、押し手の握りを前の握りよりも高い位置にもっていくことです。押し手の握りが高くなれば自然に手首が返りやすくなります。
※インパクトからバットが最先端まで振り出される時間は、わずか0.1秒程度と非常に短く、この間に自分で考えながら手首を返す時期を判断している余裕はありません。
(3)グリップを強く握り締めた状態では、ひじの屈曲(くっきょく)も回内・回外もスムーズにいかなくなります。
(4)グリップは小指と薬指に力を入れて、全体的に無駄な力が入らないように注意しておくとよいでしょう。
(5)グリップ感覚の練習としては、写真(5)~(7)のように片手で振ってみる方法があります。
(6)この練習は、バットの軌道(きどう)とグリップ感覚に注意してやりましょう。