スナップはボールをより早く投げるために重要な部分です。スナップは手首から先をすばやく振りおろす動作ですが、手首だけでなく、肘から先全体の動きを考えなければなりません。
肘から先の運動としては、手首の曲げ伸ばしや指の曲げ伸ばしのほかに、回内−回外という動きがあります。回内というのは手のひらをパーにして親指を上にした状態から
手のひらを下へ向ける方向の動きで、回外とはその逆で手のひらを上に向ける方向の動きです。
スナップ時、写真24の右上の写真のように手首をすばやく振り下ろしながら回内させるようにするのがよく、回外させる右下の写真のイメージは間違いです。
回内をともなうスナップの場合は最後まで肘が曲がりにくく、大きな腕のスイングができます。回外をともなうスナップでは肘が曲がりやすく、腕の描く円弧が小さくなって勢いのあるボールが投げられません。
回内することによって、ボールはシュート回転しやすくなりますが、強い球を投げることができます。
下半身を使わずに投げるとどうしても腕が中心の投げ方になってしまいますが、キャッチャーとしては仕方のないことです。
そのためには腕だけで十分にいきおいよく、また正確に投げられるように練習するのが一番です。
写真25は福田さんがお勧めの練習です。グランドに仰向けに寝転がり、天に向かってボールを投げ上げます。
寝転がっていますので下半身を使うことはできず、腕だけが頼りですね。
この状態で投げ上げたボールがミットに戻ってくるには、正確に投げ上げなければできません。
はじめはボールを低く、慣れてきたら除々に高く投げ上げます。この練習を繰り返すうちに腕だけの投げ方が身につきます。
実際の投球ではさらに上半身のひねりが使えます。座った状態では右肩を引き、左肩をピッチャー方向へ出して上半身をひねることができるので、さらに強く投げることが可能です。
寝転がって投げる練習をした後は必ず座って投げる練習もしなければなりません。寝転がって練習をするだけでは、いわゆる手投げになってしまうことがあるためです。寝転がって練習する方法は部分的な練習ですので、最後は総合的・実際的な練習で締めくくる必要があります。
盗塁を阻止することはキャッチャーの大事な役割のひとつですが、ランナーを簡単に進塁させるようではよいキャッチャーとはいえません。
一塁に走者がいる場合には十分に注意を払い、走り出したときはいち早く投げるための準備をしなければなりません。普通に捕球する状態で座っていては、捕球後すばやく送球はできません。そして写真26のようにミットにボールが入った瞬間には少ないステップで投球モーションに入らなければなりません。
盗塁への対応の場合、右バッターと左バッターでは対応方法が違い、またピッチャーの投げたボールがインコースかアウトコースかによっても対処方法が異なります。
まず基本的な場合は写真27のように左ヒザを絞り、ボールを捕球しながら体重を右足にのせ立ち上がります。さらに前にステップを踏み出しながらボールを持ち替えて投球モーションに入ります。
さらに、より早いステップを行うためには、写真28のように右足のヒザを内側に絞って体重をかけ捕球を待ち、左ヒザに乗り込みながら捕球、左足にのって立ち上がりながらボールを持ち替えてステップしながら投球モーションに入ります。
盗塁を察知した瞬間にヒザを内側に絞ることによってすばやく立ち上がれる状態ができます。左ヒザを絞って左足に体重を乗せているので右足がステップしやすい状態になっていますので、立ち上がりながら次のステップへと進みやすくなります。
立ち上がりながらボールをとり、右足に乗って投球モーションに入ります。 以上の体重移動は、左ヒザ→右ヒザ→左ヒザ(送球時)へとなります。盗塁を察知した瞬間の左ヒザの向きはピッチャーの投げたコースに合わせ、ボールの進入する方向へ向けます。